幻の救世主・商品ファンド物語【5】
商品ファンド法、92年4月に成立

2023-07-21

 1990年から91年にかけて商品ファンドの新規設定本数が増加し、91年3月の時点で運用本数は13本、金額は688億円に及んでいた。こうした状況下で法整備への動きが出てきたのは自然の流れで、特に通産省(現・経産省)が積極的だった。商品ファンドを管轄下に置きたいというのが本音であっただろうが、大蔵省も同様の動きを見せていた。
 まず90年9月に「商品ファンドの定義」が確立した。続いて翌10月には通産省が「日本商品ファンド協会設立案」を関係者から聴取し、12月には「日本商品ファンド設立準備委員会」の初会合が開かれている。この会合は計7回開かれた。
 91年1月に通産省は「90年代の通産政策ビジョン」を公表したが、商品ファンドは「信用産業」としての位置付けで構想に入っていた。2月には「商品投資事業法案(商品ファンド法に関する法律)」が、通産省と大蔵省との間で合意された。つまり両省で手打ちがなされ、省庁間の対立が収束したことで、法案成立に向け大きく前進した。
 3月には商品等取引問題研究会が、通産省の商務流通審議官に「商品投資事業のあり方について」と題する報告がなされ、通産省はこれを受け同月に「商品投資に係る事業の規制に関する法律案について」という法案の概要を発表している。
 着々と進む法整備を受け、法案設立前であったが商品ファンドの設定は相次いだ。法案成立前の商品ファンド運用本数は39本で、運用総額は1,400億円を超えたともいわれている。
 商品ファンド法(正式名称は「商品投資に係る事業の規制に関する法律」)は91年4月24日、国会で成立した。同法第1章第1条には法制定の目的が記されているが、以下に抜粋する。
 「この法律は、商品投資に係る事業を営む者について許可制度を実施し、その事業に対し必要な規制を行うことにより、その業務の適正な運用を確保し、もって商品投資に係る事業を公正且つ円滑にするとともに、投資家の保護を図ることを目的としている」。
 同法のポイントは①商品投資販売業者を許可制にする、②許可は6年ごとに更新する、③商品投資販売業者の業務内容と契約に当たって留意すべき点を明確にする、④主務大臣は大蔵大臣、農林水産大臣、通商産業大臣とする、⑤商品投資顧問業についても規制を設ける―などとされている。
 この法律の主目的は投資家保護にあり、これは当時いわれていた消費者保護に沿った対応といえるだろう。

(以下、次号へ続く)

参考:日本商品投資販売業協会協会史
(Futures Tribune 2023年7月18日発行・第3228号掲載)

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