手数料引下げ競争の行く着く果ては?

2023-09-07

 9月6日に配信した国内ニュース記事「ネット証券手数料引き下げ競争 」で触れた各金融商品の手数料引下げ競争が勃発した2005年は、FX取引が片道800円などという時代だった。手数料ゼロが当たり前になった現在では考えられない料金設定だが、わずか20年にも満たない以前の話である。
 そんな手数料無料競争が、大手ネット証券を軸に再燃の動きを見せている。SBI証券は9月30日、国内株の現物取引および信用取引の手数料を無料とするが、翌10月1日から楽天証券がこれに追随する。両社とも投資信託ではすでに手数料を無料としているが、今回は収益源でもある信用取引も無料化に踏み切った。狙いは個人投資家の囲い込みにある。手数料の無料化で現物株を投資家層の呼び水とし、様々な金融商品へと投資対象を広げていくことで収益源とする試みだ。
 一方、松井証券は国内現物株においてはSBI同様25歳以下の投資家に対し手数料を無料としているが、今般米国株の売買手数料を新NISAで無料とする。こうした動きに対し、マネックス証券は無料化競争に乗らず従来の料金体系を維持する見通しだ。
 金融業界に限らず、顧客が支払う手数料は企業が提供するサービスへの対価であり、無料という構図は通常あり得ない。競争の行き着く果てが過当サービスによる業界全体の疲弊を招いたという事態だけは、避けなければならない。

(Futures Tribune 2023年9月5日発行・第3237号掲載)
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