堂島取・貴金属開設1年、取引量増えるも発展途上

2024-04-01
金先物4種

 堂島取引所が貴金属市場を開設してから1年が経過する。日本における金先物は東京金取引所が1982年(昭和57)3月に将来の主力商品として上場したのが嚆矢で、40年が経過し商品先物市場の看板商品となった。母体の取引所は東京金取引所から東京工業品取引所、東京商品取引所、大阪取引所へと変わり、派生商品も金ミニ、金限日(ゴールドスポット)と増えているが、2004年5月に上場した金先物オプションは投資家に根付かず出来高なしの状態が続いている。そうした中、堂島取は取引所改革の過程で1年前に金先物を上場したが、取引量は徐々に拡大している。


 2013年2月に東京穀物商品取引所から試験上場中のコメ先物を承継し、自前の大阪コメとあわせ国内で唯一コメ先物を扱うようになった関西商品取引所(現・堂島取引所)は、まずコメの本上場を目指して取引の裾野拡大に努めた。全国各地の主要団体にコメ先物 主要産地である新潟に職員を常駐させ生産者へのアプローチを継続したものの、政治的な動きに翻弄されたこともあり2年間の試験場所延長を繰り返した。
 その後2017年12月、次期取引システムの選定を巡り取引所と商品先物業者間で軋轢が生じたことでその後の取引量が伸びず、経営的にも厳しい状況に陥った。そうした中で取引所の株式会社化移行を進めたのが現会長の重光達雄氏で、「経営改革協議会」を設置し自身は副議長として取引所の未来図を設計した。協議会が2020年10月に取りまとめた提言に貴金属市場の開設が盛り込まれているが、これが今につながっている。
 下表は現在国内で取引されている金先物の関連4商品において、上場初月から12カ月間の出来高およびキログラムに換算した取引量をまとめたものだが、堂島取の金は2月までの集計で合計122万7,182枚、取引量は約12t(※金標準以外は受渡しを行わない)となった。これらは金ミニ、金限日のスタート時と比較して少ないものの、国内ネット証券最大手のSBI証券とシステムが繋がっている優位性もあり、今後のプロモーション次第ではさらに取引が拡大する可能性は少なくないといえるだろう。
 ただし金だけで大阪取引所に比肩する存在感を出すことは非現実的である。また経営基盤の観点からも、現状の出来高では財務的に黒字転換の決め手には至らないとの見方が多数である。
 主務省の認可を前提に、当面コメ先物と金先物の両輪で認知度を高め、協議会の将来構想をベースにした新たな取引所像を示していく必要があるだろう。

【金先物関連4商品の上場初月~12カ月間の出来高と取引量】 金商品別スタート出来高

(Futures Tribune 2024年3月26日発行・第3278号掲載)
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