インサイダーが残した爪痕

2025-02-14

 東京証券取引所の元社員がインサイダー取引に関与したとされる事件が起こった。親会社である日本取引所グループ(JPX)は山道裕己最高経営責任者(CEO)ら3人の報酬を減額するという。山道氏と東証の岩永守幸社長はそれぞれ2カ月、月額報酬を50%減額する。このほか東証の青克美常務執行役員は同様に2カ月間、月額報酬を20%減額し、渡辺浩司上場部長は厳重注意とした。
 30日の記者会見では、事件の経緯や再発防止策をまとめた報告書を金融庁に提出したことを公表し、「市場関係者に多大な迷惑をかけ、深くおわびする。信頼回復に全力を尽くす」(山道CEO)と陳謝している。
 事件の経緯は、東証の20代の元社員(懲戒解雇)が上場部開示業務室に在籍していた2024年1月から3月、未公開の株式公開買い付け)(TOB)に関する情報を父親に伝え、父親が情報をもとに約1700万円分の株式を買い付けたとされるものだ。当然金融商品取引法違反で、東京地検特捜部は元社員と父親を昨年12月に在宅起訴した。
 何事に関しても再発防止策の要諦は、チェック機能の強化だろう。ということは、当然内部的に入室履歴など情報管理に対する手間が増えるばかりか、禁止事項も増える。対外的な信頼回復はもちろん最優先事項だが、取引所社員へ過度な負担が生じないことを願いたい。

(Futures Tribune 2025年2月4日発行・第3339号掲載)
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