全米販の2040ビジョン、市場育成に「先物」なく
2024-05-15 全国米穀販売事業共済協同組合(全米販)が策定した「米穀流通2040ビジョン」は、その名のとおり米穀をめぐる生産・流通・消費の2040年版シミュレーションである。ビジョンではこのままの状況を静観した場合の「現実的シナリオ」と、対策を講じた「野心的シナリオ」の二部構成となっている。
前者の現実的シナリオによると、2040年におけるコメ需要は2020年比41%減の375万t、コメ生産量は同65%減の30万人程度と試算している。このシナリオに沿うと2033年には生産力が需要を支え切れなくなる。このため2040年に米穀流通は50億円程度の営業赤字に陥ると予測する。
一方の野心的シナリオは、コメ需要の拡大、生産支援、流通改革を盛り込んだもので、このシナリオがうまく運べば2040年の国内コメ需要は同13.4%増の722万t(輸出米を含む)、米穀市場規模は同18.0%増の5.97兆円に成長するという未来を描いている。コメ流通も2025年を境に反転し、2040年には卸流通額4.78兆円、卸利益額2,900億円となる予測だ。
これら発展シナリオにおいて、需要拡大の項目に「コメ市場の育成」が掲げられている。だが高価格帯市場の形成がメインで、先物市場にはまったく触れていない。これでは従来のコメ政策と何ら変わるところがない。先物の重要性を説き続ける必要がある。
(Futures Tribune 2024年5月14日発行・第3287号掲載)
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