中国の先物スキーム、投機資金で農家支援が

2023-12-04
中国山西省の農家

中国山西省の農家のイメージ画像

 11月27日の第7回農産物市場問題研究会では、林康史・立正大経済学部教授の報告を補完する立場で、以前函館大学で教鞭をとっていた藤原凛氏が登壇し、中国の先物市場について現状を報告した。中国の先物市場については第6回の研究会でジャーナリストの山口亮子氏が説明したが、藤原氏の報告は「保険+先物」の現状などをさらに突き詰めた内容であった。
 例えば農産物を例にとると、中国では被保険者(農家)が保険掛金を支払い保険に加入し、保険会社が仲介する形で先物業者からオプションを購入する。先物業者は先物市場にリスクヘッジ(再保険)でつなぎ、リスク負担に応じたリスクプレミアムを受け取る構造だ。
 仕組みとしては、かつて日本である程度の規模まで成長した商品ファンドに近い。日本も中国も、農家が先物取引に精通しているケースはほとんどなく、日本のコメ農家もリスクヘッジという概念が希薄であるからこそ現在の流通形態が定着し、農家保障に多額の税金が投入されている。中国の場合、農家の保険掛金に対し自己負担に加え政府補助が出るが、上記スキームの関係で先物取引所と先物会社が政府補助に近い金額を農家に支援している格好となっている。つまり投機資金が、政府の補助金に対する補助の役割を果たしており、日本と比較して大変合理的な態勢だ。

(Futures Tribune 2023年11月28日発行・第3255号掲載)
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