金融戦争に勝利する条件

2023-10-26

 シカゴマーカンタイル取引所(CME)とシカゴ商品取引所(CBOT)が合併すると報道されたのは2006年10月17日だった。両取引所は長年ライバル関係にあったが、合併により当時世界トップの欧州金融先物取引所(ユーレックス)を取引規模で上回り、世界最大のデリバティブ取引所となる算段であった。
 ところがこの話に米インターコンチネンタル取引所(ICE)が待ったをかける。CBOTに対し敵対的買収を打ち出し、以後CMEとのCBOT買収合戦は泥沼と化した。ICEは2001年に欧州のICE フューチャーズ(IPE=旧ロンドン国際石油取引所)を買収したが、取引所間競争に打ち勝つため上場商品の拡充が必須命題で、CBOT買収は譲れなかったのである。ICEが提示した買収総額は99億㌦と、CMEの提示金額を1割ほど上回る額だった。
 結果的に買収合戦はCMEに軍配が上がり、社名を「CMEグループ」として現在に至るまで世界最大のデリバティブ取引所として君臨している。
 ただ、合併に際し懸念材料が一点あった。それはCMEとCBOTが合併すると米国先物取引の市場占有率が 85%まで上がるため、米司法省が首を縦に振らない可能性があったのである。それでも司法省は取引所競争の現状を鑑み「競争を阻害しない」と決めた。国家を跨ぐ金融戦争に勝つには、政府側のバックアップが必要不可欠である。

(Futures Tribune 2023年10月24日発行・第3247号掲載)
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