市場に植え付けたブランドイメージ

2023-10-13

 本号では国内商品取引所がかつて直面したシステム共有化問題を取り上げたが、取引所におけるシステム取引のイノベーションはナスダック(米)だろう。1971年2月の設立で、当初は立会場を持たず既存の店頭取引の価格表示(気配値)をネットワークで繋いだ電子取引システムだった。設立以後、制度上は店頭取引市場という位置づけだったが、2006年に取引所の免許を取得している。
 設立当初からの主要な戦略に、成長が見込める新興企業の誘致を掲げた。実際、インテルやアップル、マイクロソフトもナスダックで株式を公開している。新興企業を誘致するためナスダックの新規株式公開基準に利益関連の条項はなく、赤字企業であっても上場が可能だった。
 とはいえナスダックが成功した大きな要因は上場ハードルの低さではなく、ブランドイメージを確立できたことだろう。「IT・ハイテク・ベンチャー」という最先端のイメージを市場に植え付けることに成功し、「ナスダック上場=ハイテク成長企業」という図式を定着させた。
 1980年にナスダックへ上場したアップルは、87年にニューヨーク証券取引所への上場を検討したが結局ナスダックに留まっている。アップルは流動性の高さを重視してナスダックに残ったともいわれているが、1994年にナスダックはニューヨーク証取の出来高を上回っている。

(Futures Tribune 2023年10月10日発行・第3244号掲載)
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