先物市場整備は産業化の第一歩

2023-08-24
田んぼイメージ写真

 堂島取引所がコメ先物復活に向け動き出す。農水省による「米の将来価格に関する実務者勉強会」、農政調査委員会が発足した「農産物市場問題研究会」に加えて取引所サイドも動きを具体化させることで、市場復活に向けた大きな推進力となるだろう。そもそもこうした展開に至る背景には、日本のコメが産業化の波に乗れていないという実情がある。需給調整を農政主体でやっているため、高価格帯の米価維持が第一義になってしまい、コメ産業は護送船団方式の象徴と化し自由化の対極にあるためだ。
 実際、コメ産業の硬直化はデータにおいても如実に表れている。1984年の最盛期に11.7兆円だった日本の農業総産出額は、2020年に8.9兆円と2.8兆円減った。各ジャンルの推移を比べると、畜産3.3兆円→3.2兆円、野菜2.0兆円→2.2兆円、果実0.9兆円→0.9兆円とほとんど横ばいか、野菜に関しては2,000億円ほど増えている。2.8兆円減額の戦犯はコメで、3.9兆円→1.6兆円と減少分の80%、金額にして2.3兆円ものマイナス分がコメによるものである。
 ヘタに生産調整などせず「コメは作れるだけ作る。余ったら輸出する」という単純な図式の方が、理にかなっていることは明白だろう。ただし、そのためには指標価格の提示が重要だ。だからこそ先物市場が必要で、市場整備は産業化の第一歩なのである。

(Futures Tribune 2023年8月22日発行・第3234号掲載)
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