取引量よりも価格の信頼性

2023-06-07

 日本の商品先物市場は、この20年でガタガタになった。業界という体を何とか保ってはいるが、これ以上の縮小はまさに命取りである。市場の規模を図る上で、取引量は確かに重視すべき項目だが、それ以上に着目すべきは価格の信頼性といっていいだろう。
 例えば東京都芝浦の食肉市場は、食肉流通量全体の8%程度に過ぎないが、そこで公表される価格は食肉の指標価格として関係者に信頼されている。
 またニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)に上場されているWTI原油は、生産量がテキサス州内陸部で1日40万バレルほど(世界全体の0.5%程度)に過ぎず、その大部分がオクラホマ州クッシングにある精製所を経由しパイプラインで米国内に輸送されているという状況だ。つまり日本国内にWTI原油は一滴も入っていないわけだが、こうしたローカル原油であっても「指標価格」として世界的に認知された場合、それは基幹商品としてみなされるわけだが、こうした事例も価格決定権を握る重要性を認識できる好例といえる。
 取引量や流通量よりも、まずはその市場で提示される価格がどれだけ当業者に信頼され、利用されているかという点に重きを置いて、商品設計を見直し市場の未来を考えるべきだろう。そうすれば、必ず復興への糸口は見えてくる。

(Futures Tribune 2023年5月30日発行・第3218号掲載)
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