当業者不在の先物市場

2023-06-01

 1962年(昭和37)、全国穀物取引所連合会(全穀連)が「上場商品研究委員会」を設置した。7月の初会合で検討された商品は、落花生、菜種、ふすま、コーヒー豆、大豆油、とうもろこしの6品目である。その後64年にかけて、玄そば、茶、乾のり、もち米、こんにゃく玉、乾しいたけ、鶏卵なども検討商品として追加された。これらの商品はいずれも、取引量が見込めない、統制時代の名残が強いといった理由で、当時は上場に至らず終わった。具体的には、落花生だと検査規格が県ごとに統一されていない、大豆油は危険物貯蔵規制に適合する保管倉庫がない、コーヒー豆は当時金額にして3億2,000万円の輸入量しかないといった理由である。
 上記のうち、とうもろこし、コーヒー豆、鶏卵は後に上場されたが、現在残っている農産物で取引があるのはとうもろこし(大阪取)のみである(トップ記事本文参照)。ただしこれは米国産が対象なので、国産品の農産物は現在商品先物市場で何も取引されていないというのが実態である。新規商品の上場は、当業者の要望を取引所が汲み取って商品を追加するのが本来の姿といえるだろうが、今は「上場に反対する当業者を取引所が説得する」という歪な形が繰り返されている。これが当業者不在の市場を作り出す最大の要因であろう。

(Futures Tribune 2023年5月23日発行・第3217号掲載)
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