農業経営安定化に「コメ先物は必要」
主要生産地からの声、農政調査委員会会合で
2022-12-07農政調査委員会は1日、都内で開催した米産業談話会(コメに関する研究会)で、登壇した大手生産者らがコメ先物の必要性を訴えた。パネリストは秋田県大潟村農協組合長の小林肇氏、茨城県龍ヶ崎市・横田農場代表の横田修一氏、新潟県長岡市・神谷生産組合取締役の永井健吾氏で、農政調査会の吉田俊幸理事長が司会を務めた。会合では生産現場の現状や農政の課題について、各生産地の事情を踏まえながら紹介し、コメ先物取引についても生産者の立場から必要性を訴えた。また吉田氏も、中国や韓国にも抜かれたコメの収量などを挙げ、農業技術開発の遅れに懸念を表した。
JA大潟村の小林組合長はコメ先物について、「先物と現物をセットで設置することが重要で、農家が売り急がなくても安定した経営を実践できるようにしなければならない」と語った。また、10年間に及んだ試験上場期間中のコメ先物が広まっていかなかった要因について、「農協が拒否し続けたからで、情報も出さなかった。先物は全然怖くないことに全中あたりが理解を示す必要があるのではないか」との見解を示した。
コメ政策の転換を受け小林氏はコメ農家の経営能力が試される時期だとし、米価下落に対応するにはコメ先物取引も視野に入れるべきだと指摘した。茨城で横田農場を経営する横田修一氏も「先物があれば価格の指標となった。廃止は残念だ」と述べた。吉田理事長も「先物がなくなって困ったのは、実は農協ではないか。売れ残ったコメは農協へいくが、この部分が最も価格変動するからだ」と問題提起する。
現状、取引先との価格設定について神谷生産組合(新潟)の永井健吾取締役は「10年変えていない」とし、横田氏も「15~20年くらい同じ値段で取引している」という。だが肥料などが高騰しているため、値上げしないと生産者の負担は増す一方だ。
なお、現在のコメ行政における基本方針として、主食用米の過剰生産による米価下落を避けるため、飼料用米を起点とする政策がとられている。例えば新米の割り当てについて、まず飼料用米の分量をストックしてから主食用米にまわすという順番になっている。
こうした状況に対し、「飼料用米作りは生産者にとってモチベーションを下げる」(横田氏)、「大手卸との繋がりもあるので飼料米はやらずにはいられないが、新米を人間ではなく家畜が食べるという状況では、正直やりたくない」(小林氏)と本音を語る。またコメ生産量全国一の新潟では「高齢の農家が次々に廃業しているのが実態」(永井氏)だが、「パックライスは今後成長が期待できる商品だろう」(小林氏)と期待を寄せる。
(Futures Tribune 2022年12月6日発行・第3184号掲載)
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