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暗号資産取引所大手FTXが破綻

2022-11-22

 暗号資産取引所を運営する大手業者FTXトレーディング(本社・バハマ)が米国時間の11日、米連邦破産法11条の適用を申請し破綻した。同社は2019年に設立された暗号資産取引所で、100万人以上の顧客を有する大手として、米経済誌フォーブスの「世界の暗号資産取引所ランキング」(2022年3月)でも5位に選定されている(表はフォーブスジャパンのサイトを基に作成)。米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手もグローバル・アンバサダーとして広告塔になっていた。

 破綻の発端は関連会社であるアラメダ・リサーチの不健全なバランスシートがリークされたことで、これをきっかけに投資家がFTXから資金を引き揚げる動きが活発化し、資金繰りに行き詰った。
 同業大手であるバイナンスが買収による救済措置に名乗り出てFTXと合意に至ったものの、結局資産査定後すぐに買収を撤回している。これで成す術がなくなり、11日の破産法適用申請に至ったという経緯だ。

 日本法人のFTXジャパン(東京都千代田区)も、明確な理由を示さないまま顧客からの預かり資産を出勤停止にしたとして、関東財務局から業務停止命令および業務改善命令を受けている。
 なお、米連邦破産法第11条(チャプタ―イレブン)に基づいた破産申請は、日本の民事再生法に適応する再建型の倒産法制度で、企業の再建を目的としたものだ。企業がチャプタ―イレブンの手続きに入ると、スポンサーや投資ファンドが資産と負債の中から有望な部分だけを選別し買収を試みる、いわゆる「チェリーピック行動」が可能になるという利点が発生する。FTXグループの申請では、負債は100億ドル(約1.3兆円)から500億ドル(約6.9兆円)に上るとされる。


■米経済誌フォーブスの「世界の暗号資産取引所ランキング」(2022年3月)

順位取引所名  本社  特徴
1位コインベース
(Coinbase)
アメリカアメリカ最大の暗号資産取引所で、2021年4月ナスダックに直接上場した。国内 44 州で事業展開しており、アメリカの取引所でコイン提供数は最大で、ニューヨーク州では銀行免許も取得している。
2位クラーケン
(Kraken)
アメリカアメリカを拠点とし、海外では英国、日本などの当局に登録されている。アメリカではニューヨーク州とワシントン州を除くすべての州で事業展開しており、ワイオミング州では銀行免許を取得している。また、190億ドル(約2.3兆円)を超える顧客のビットコインとイーサリアムが安全かつ証明可能な形でプラットフォーム上に存在していることを確認するプルーフ・オブ・リザーブ監査の認証を受けている。
3位ロビンフッド
(Robinhood)
アメリカアメリカの上場企業で、SECが規制するブローカーディーラーとして、手数料無料の株式と暗号通貨のトレードを提供している。暗号資産は7銘柄と、他取引所と比べ少ないが、2021年に発表した外部に暗号通貨を送信するためのウォレットの待機リストには200万人以上が登録している。保有する暗号通貨の額は220億ドル以上と、非常に多い。
4位Crypto.comシンガポールアメリカの規制当局にも承認されており、2021年にはNBAのロサンゼルス・レイカーズが使用するスタジアムの命名権を7億ドルで獲得したことで注目された。同社は169種のコインと、349の取引ペアを提供している。エントリーレベルの取引に40ベーシスポイントという比較的高価な手数料がかかるが、取引ボリュームはコインベースを上回っている。
5位FTXバハマ
6位バイナンス
(Binance)
マルタ(※)取引ボリュームで世界最大の暗号資産取引所。2022年3月、バーレーンの中央銀行から暗号資産のサービス免許を取得した。昨年、マネーロンダリング防止プログラムに関して複数の国の問い合わせを受けたと報じられていた。2022年、資金難に陥ったFTXの買収に動いたが、結局撤回した。(※)マルタは5月、同社が管理下にないと否定
7位フォビ
(Huobi)
中国2013年に設立され、200以上の暗号通貨のスポット取引に加え、デリバティブやマージンサービス、OTCデスク、プライムブローカレッジを提供している。以前にウォッシュトレード(水増し取引)の批判を浴びたことがあり、2021年に中国とシンガポールでの事業を閉鎖した。現在、日本、英領ジブラルタル、ルクセンブルグの当局に登録されている。
8位ジェミニ
(Gemini)
アメリカ2013年にウィンクルボス兄弟によって設立され、規制遵守のイメージ強化に力を入れている。NFTプラットフォームの「Nifty Gateway」を所有し、2021年11月、モルガン・クリーク・デジタルから71億ドルの評価額で4億ドルを調達した。取扱いコインの数は平均よりやや下で、手数料は中程度とされる。
9位GMOコイン日本日本最大の暗号通貨取引所で、約20の通貨ペアを業界最低水準の取引コストで提供している。親会社のGMOインターネットグループは、FX取引高が世界1位のGMOクリック証券を傘下に置いている。
10位eTOROキプロス世界150社以上の顧客企業と、1900万人以上の個人ユーザーにマルチアセット取引を提供する。評価額96億ドルの企業で、欧州や米国などの国の当局に登録されている。個人顧客向けの手数料は非常に高いが、子会社のeToroXは低い手数料を設定している。
ランキング参考資料:Forbes JAPAN
(Futures Tribune 2022年11月15日発行・第3180号掲載)
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