Japan Power Summit 2025開催、電力関係者等700人超が参加

2025-11-07

レセプション会場は昨年以上の賑わいに

 欧州エネルギー取引所(EEX)及び東京商品取引所(TOCOM)は21日、「Japan Power Summit 2025」を都内で開催した。国内外の電力や取引所の業界関係者およそ700人超が大手町サンケイプラザ(千代田区大手町1-7-2)に集まった。EEXとTOCOMは2023年に同イベントを初共催し約300人を集客、翌24年は550人とほぼ倍増した。今年はさらに150人以上参加者数が増し、会場は満員だった。TOCOMは19年9月に電力先物の取引を開始し、EEXは翌20年5月から日本の電力先物を扱っている。EEXは欧州に取引基盤を持つエネルギー取引所で、ドイツ取引所グループの傘下にある。


 イベントには国内外の電力・エネルギー関連企業や金融機関、政策当局関係者など700人を超える参加者が集い、日本の電力先物市場の今後と制度設計に関する議論が交わされた。
 既にEEX傘下の日本市場向け先物取引量は、2023年1~9月の段階で前年同期比で倍増となる102.52TWhに達しており、TOCOMでも同期間に約3.96TWhと7倍近い増加を記録している。
 市場参加者数も増加傾向にあり、日本国内の発電・供給会社だけでなく海外の金融機関・トレーダーの参入余地も広がっている。例えば、EEX日本法人CEOのボブ・タカイ氏は「物理的供給をベースにしながらも、リスクヘッジの手段としてファイナンシャル商品が導入できれば参加者は確実に増える」と発言しており、海外参加者の拡大が流動性向上に直結するとの見方を示している。
 さらに、EEXは25年4月~新会計年度型(FY)先物契約を開始し、12月には中部電力エリア向けの新商品も導入予定となっている。TOCOMも26年春をめどに中部エリア商品および、現物取引所である 日本卸電力取引所(JEPX)と連携した先物サービスの提供を視野に入れており、商品の地域拡張・多様化が鮮明になっている。
 こうした環境変化に対し業界専門家は、日本の電力先物市場のポテンシャルの大きさを指摘している。例えば、米調査会社 Eurasia Groupのヘニング・グロイスシュタイン氏は、「日本の消費電力量に匹敵する2,500TWh規模の取引量が2030年までに実現できれば、欧州と肩を並べる世界最大級の先物電力市場になる」と述べている。
 背景には、国内電力市場での構造転換がある。大手発電会社である JERAが保有する10年契約が満期を迎えることに伴い、小売事業者は市場ベースでの調達やヘッジを余儀なくされ、これが先物取引拡大の契機となっている。
 一方で制度設計の詳細が未公表な部分が多く、新たに予定されている取引市場や第2フェーズの排出権取引制度などが先物市場とどのように相互作用するか明確ではないという指摘が懸念されている。
 今後注目されるのは小売電力事業者に対する制度改革である。経済産業省が2030年度目途に、事業者に対して供給能力の50~70%を数年前に確保することを義務付ける案を示しており、これが実現すれば供給先物・契約市場(ヘッジ手段)の成長を大きく後押しすると見られている。
 国内においては、電力・エネルギー会社のみならず金融機関・トレーディングハウス・産業ユーザーがリスク管理や調達戦略の観点からこの電力先物市場を注視している模様だ。
 集客の増加率を鑑みると、来年以降のサミット開催はより広域な会場に変更する必要がありそうだ。

(Futures Tribune 2025年10月28日発行・第3393号掲載)
先物業界関連ニュースに戻る