
「今後も続けたい」64%「満足」53%、主務省商品先物実態調査
2025-06-20農水・経産両主務省は2024年度(令和6)における「商品先物取引に関する委託者等の実態調査」を実施し報告書を公表した。同調査は「商品先物取引の受託業務の現状等を把握し、今後の商品先物取引に関する制度立案や運営を行う上での基礎資料として活用する」との目的で実施したもので、調査期間は2025年1月から2月にかけて行い、調査方法はアンケート調査票を用いて郵送またはE-MAILで受け付けた。調査対象において委託者数は4,841人で有効回答数が657人(回答率13.6%)、一方業者数は36社で全社が回答した。以下、調査結果を記載する。
※報告書中の「n」は質問に対する回答者数で、100%が何人の回答に相当するのかを示す比率算出の基数となる。複数回答の質問においては、総回答数を回答者数(n)で割った比率を回答割合として示しているため、合計が100%を超える場合がある。グラフの一部では回答数0(0.0%)を省略しているものがある。結果数値(%)は、小数点第2位を四捨五入しているため、合計が100.0%にならない場合がある。クロス集計では、性別、年齢別などの分類軸の無回答は省略している。そのため、分類軸の「n」の合計が全体の合計と一致しない場合がある。
【Ⅰ.回答者の属性】 |
---|
(1)性別 「男性」が93.5%、「女性」が3.0%(不明3.5%)。 |
(2)年齢 年代別では、「50歳代」と「60歳代」(60~64歳:16.5%、65~69歳:10.9%)がともに27.4%の同率で最も高く、次いで、「70歳代」(70~74歳:6.5%、75~79歳:10.0%)の16.5%となっており、50歳代~70歳代で全体の7割以上を占めている。 |
(3)職業 「会社又は団体の役員」が24.3%と最も高くなっている。次いで「会社員又は団体職員」(22.2%)、「無職」(19.6%)、「自営業」(15.2%)、の順となっている。 |
(4)年収 「300万円未満」が23.9%で最も高く、「300万~500万円未満」が20.9%で続く。次いで、「500万~700万円未満」が15.2%、「1千万~2千万円未満」が11.3%で続いている。 |
(5)保有資産額 「5千万円以上」(25.7%)が最も高くなっている。次いで「1千万~2千万円未満」(15.7%)、「3千万~5千万円未満」(14.3%)、「300万円未満」(13.5%)の順となっている。 |
【Ⅱ.取引の現状】 |
---|
(1)取引を行った商品 期間中に商品先物取引を行った商品の取引割合は、堂島取引所では「金」が54.8%で最多、次いで「白金」が22.2%、「銀」が10.9%、「堂島コメ平均(米穀指数)」が9.6%で続いている。 東京商品取引所では「原油」が46.5%で最も高く、「ガソリン」が2.6%、「軽油」が0.9%、「液化天然ガス(LNG)」が0.4%となっている。性別、年代別にみると、堂島金は「65~69歳」が64.0%と全体より9.2ポイント高くなっている。東商取の原油は「75~79歳」が87.0%で突出している。 |
(2)大阪取引所において貴金属等の先物・オプション取引を行ったもの 「貴金属」では「金」が42.6%、「白金」が25.2%全体で上位2商品となっている。このほか「ゴム」は12.6%で全体の5位、「農産物」では「とうもろこし」が7.0%だった。 |
(3)調査期間中の注文方法 令和6年1月から12月の注文方法については、「ネット取引により注文」が79.1%で最も高くなっている。次いで「商品先物取引業者からの連絡等を受けて注文」(12.2%)、「自分から商品先物取引業者に連絡して注文」(6.1%)となっている。 年代別でみても、ほぼ全年代で「ネット取引により注文」が7割以上となっている。中でもネット注文は「60~64歳」で92.1%と最も高くなっている。一方で「40~49歳」では、「商品先物取引業者からの連絡等を受けて注文」が18.9%と、他の年齢層より高くなっている。 商品先物取引を始めたきっかけ別でみると、「自分から連絡して始めた」カテゴリーの取引では、ネット注文が95.0%と高くなっている。これに対し「電話勧誘を受けて始めた」カテゴリーでは、商品先物取引業者からの連絡等を受けて注文が49.0%と、ネット注文の27.5%より高く、始めたきっかけがそのまま注文方法につながりやすい傾向が見て取れる。また、取引のきっかけが「インターネットを経由して始めた」カテゴリーの取引手法では、ネット注文が100%となっている。 |
(4)取引経験のある金融商品 国内商品市場取引以外に取引経験のある金融商品については、「株式取引」が61.3%で最も高く、次いで「投資信託」が42.6%、「FX(取引所における取引)」が39.1%、「日経225(ミニを含む)」が36.1%となっている。 |
(5)期間中株式または公社債の取引を行ったか(前年以前の保有分を含む) 期間中株式または公社債の取引を行ったかについては、「はい」が45.7%、「いいえ」が45.2%で、僅差で「はい」の割合が高い。 年齢別でみると、「40~49歳」では「はい」が54.1%と過半数を占める一方、「50~59歳」、「60~64歳」、「75~79歳」ではいずれも「いいえ」が過半数となっている。 |
【Ⅲ.商品先物取引業者との関係】 |
---|
(1)これまでに取引した商品先物取引業者数 「1社」が37.8%と最も高く、次いで「2社」(20.4%)、「3社」(17.4%)となっており、「2社」以上の複数社との取引経験が約6割となっている。年齢別では「40~49歳」では「1社」が56.8%と、他の年齢層と比べ高い。 |
(2)現在取引している商品先物取引業者数 「1社」が73.0%、「2社」15.7%となっており、8割以上が2社以下となっている。年齢別では「60~64歳」で2社以上の割合が3割を超え他の年齢層と比べ高い。 |
(3)商品先物取引の経験期間(累積) 「10年~20年未満」が16.1%で最も高くなっており、次いで「20年~30年未満」(13.9%)、「1~3年未満」(13.0%)となっている。全体の7割以上が1年以上の取引経験があり、4割以上は10年以上の経験となっている。 年齢別でみると、「40~49歳」で1年~3年未満が27.0%と他の年齢層に比べて高くなっている。 職業別でみると、「会社又は団体の役員」は「1年~3年未満」が23.2%で、「会社員又は団体職員」は「6カ月~1年未満」が17.6%でそれぞれ最も高くなっている。「無職」については、10年以上を合計した割合が5割を超えている。 |
(4)累積の損益 「500万円未満の赤字」が30.9%で最も高く、次いで「500万円未満の黒字」が23.9%となっている。“黒字”の合計は36.9%であるのに対し、“赤字”を合計すると53.5%となっている。 |
(5)投資割合 保有している資産総額に占める国内商品市場取引の投資割合は、「10%未満」が46.5%で最も高く、次いで「10%~30%未満」が25.7%となっており、合わせて7割以上が30%未満となっている。 年齢別でみると「50~59歳」は、30%以上の合計が3割を超え、他の年代に比べて高くなっている。 |
(6)商品先物取引を始めた動機 「資産運用」の59.1%、「投機」の28.7%の順で高くなっており、「資産運用」の意識が高いことがわかる。また、商品受け渡しの「現物取得」という回答はみられない。 年齢別でみると、「75~79歳」で「投機」が52.2%と5割を超え、他の年齢層と比べ高い。 |
(7)現在の商品先物取引業者と取引をしているきっかけ インターネット経由」が45.7%で最も高く、次いで「電話勧誘」22.2%、「自分から連絡」の17.4%となっている。 年齢別でみると、「65~69歳」で「インターネット経由」が56.0%と他の年代に比べて高く、「60~64歳」でも52.6%と5割を超えている。「75~79歳」では「自分から連絡」が43.5%で最も高くなっている。 注文方法別でみると、「ネット取引以外により注文」では「電話勧誘」が79.1%と最も高く、「ネット取引による注文」では「インターネット経由」が57.7%と最も高い。 |
(8)契約締結前交付書面のわかりやすさ 「わかりやすい」が15.7%、「どちらかというとわかりやすい」が27.4%となっている。これに対して、「わかりにくい」は5.7%、「どちらかというとわかりにくい」が17.4%となっている。 年齢別でみると、「60~64歳」では「わかりにくい」(10.5%)と「どちらかというとわかりにくい」(21.1%)の合計が3割を超え他の年齢層と比べて高くなっている。 商品先物取引を始めたきっかけ別でみると、「わかりやすい」、「どちらかというとわかりやすい」の合計は「自分から連絡して」では62.5%と6割を超え高い一方、「インターネットを経由して」では40.9%、「電話勧誘を受けて」では33.3%となっており、取引のきっかけにより差がみられる。 |
(9)国内商品市場取引を始める時の業者からの説明 「十分な説明を受けた」が46.1%、「ある程度説明を受けた」が45.2%であるのに対し、「ほとんど説明を受けなかった」(6.1%)、「まったく説明を受けなかった」(2.2%)の回答はわずかである。 年齢別でみると、「十分な説明を受けた」については「50~59歳」では55.6%と他の年齢層と比べ高い一方、「75~79歳」では39.1%と4割に達せず低くなっている。 注文方法別でみると、「ネット取引以外により注文」では「まったく説明を受けなかった」、「ほとんど説明を受けなかった」との回答はみられず、「十分な説明を受けた」(65.1%)と「ある程度説明を受けた」(34.9%)との合計が100%となっている。 取引のきっかけ別でみると、「十分な説明を受けた」は「インターネットを経由して」で41.0%と他のきっかけに比べて低くなっている。 |
(10)商品先物取引業者に対する不満 「特に不満はない」が74.3%と最も高くなっており、7割以上は不満を持っていない。不満を持っている内容としては、「商品先物取引業者のサービス、情報提供が不十分である」(14.3%)、「外務員の説明・アドバイスが不十分である」(5.7%)などとなっている。 令和6年中の注文方法別でみると、「特に不満はない」の割合は、「ネット取引以外により注文」よりも「ネット取引により注文」の方が15.2ポイント高い。「ネット取引以外により注文」では「商品先物取引業者のサービス、情報提供が不十分である」(23.3%)、「外務員の説明・アドバイスが不十分である」(20.9%)がそれぞれ2割以上となっている。 |
(11)商品先物取引業者からの勧誘について 期間中の商品先物取引業者からの勧誘については、「損益や値動きについて断定的なことを言われた」が5.2%で最も高く、次いで「勧誘を希望しないと伝えたが、再度勧誘を受けた」が3.9%、「しつこい/威迫を感じるような勧誘を受けた」が2.6%となっている。なお「上記のような勧誘を受けた経験はない」は83.9%となっている。 注文方法別でみると、「上記のような勧誘を受けた経験はない」の割合は、「ネット取引により注文」(90.1%)が「ネット取引以外により注文」(65.1%)よりも25.0ポイント高い。また、「ネット取引以外により注文」のうち、「商品先物取引業者からの連絡等を受けて注文した」では、全体と比べて「損益や値動きについて断定的なことを言われた」が12.7ポイント、「勧誘を希望しないと伝えたが再度勧誘を受けた」が14.0ポイント高い。 年齢別では「65~69歳」で、「左記のような勧誘を受けた経験はない」(80.0%)が他の年齢層と比べて低く、「損益や値動きについて断定的なことを言われた」(12.0%)が他の年齢層と比べ高くなっている。 取引のきっかけ別でみると、「左記のような勧誘を受けた経験はない」は「インターネットを経由して」(90.5%)、「自分から連絡して」(90.0%)が約9割で全体と比べて高くなっている。 |
(12)勧誘を迷惑と感じる時間帯 【午前の時間】「9時以前」の割合が29.6%で最も高くなっている。 年齢別でみると、「40~49歳」、「50~59歳」、「60~64歳」で「9時以前」が3割を超えて高くなっている。 【午後の時間】「18時以降」の割合が26.5%で最も高く、次いで「19時以降」が15.2%で高くなっている。 年齢別では、「60~64歳」で「18時以降」が36.8%と3割を超えて高くなっている。 |
(13)商品先物取引についての満足度 「大いに満足」が13.0%、「満足」が40.0%で、合計すると53.0%が満足している。一方で「不満」が4.3%、「大いに不満」が7.8%で、合計12.1%が不満と感じている。 年齢別でみると、「60~64歳」で“満足”とする割合が68.5%と他の年齢層と比べ高くなっている。 注文方法別で “満足”とする割合をみると、「ネット取引により注文」で59.3%と高く、「ネット取引以外により注文」(27.9%)より31.4ポイント高くなっている。 |
(14)商品先物取引の継続意向について 商品先物取引の継続意向については、「今後も続けたい」が64.3%、「今後は取引を止めたい」が10.9%で、今後も続けたい割合の方が53.4ポイント高い。 年齢別で「今後も続けたい」の割合をみると、「60~64歳」で76.3%、「50~59歳」で73.0%と7割を超えて高くなっている。注文方法別で「今後も続けたい」の割合をみると、「ネット取引により注文」で71.4%と高く、「ネット取引以外により注文」(32.6%)より38.8ポイント高くなっている。 |
(Futures Tribune 2025年6月17日発行・第3365号掲載)
リンク
©2022 Keizai Express Corp.