堂島コメ平均実質稼働、SBI北尾社長「堂島を総合取に」

2024-08-23

 堂島取引所が本上場したコメ先物「堂島コメ平均」が13日、取引を開始した。初日の出来高は3枚だったが、マーケットメイカーが入っての本格的な始動日は20日で、この日は大阪で記念のセレモニーが行われた。会場には大阪府の吉村洋文知事が参列し祝辞を述べたほか、2021年に堂島取が株式会社となる際、最大額を出資したSBIホールディングスの北尾吉孝社長も登壇し「堂島は将来的に総合取引所を目指す」など金融都市構想に絡めた自身の考えを明らかにした(下部に詳細)。堂島コメ平均は当初、SBI証券、岡安商事、コムテックス、北辰物産の4社が取り扱っている。


 プレオープン的な扱いとなった堂島コメ平均における開設初週の出来高は、初日の13日含め最初の3日間が3枚、16日は取引がなく出来高はゼロ、19日も再び3枚で、要は参加者不在の値付売買だった。実質的な取引初日となった20日は6枚だった。 
初動が鈍いのは堂島取の事前の啓蒙活動がうまく回らなかったからで、生産農家も昨今の米価高騰を受け実は先物に関心を抱いているという話も聞こえてくる。だが共通している不満は「どこでやったらいいのかわからない」という極めて初歩的な問題で、今後は主要産地の稲刈りスケジュールに合わせた現地啓蒙が必要になるだろう。 
新しいコメ先物は指数先物という形を取り、農水省が毎月公表するコメの相対取引契約の平均価格を基に算出している。堂島取では現物受け渡しを取り扱わないため、現物米を希望する参加者に向けて「みらい米市場」(東京都新宿区市谷左内町5)と連携し、様々なニーズに対応しつつ出来高の増加を図る。 
以前の産地米を主体とする試験上場が続いたコメ先物は2021年8月に本上場申請を不認可とされ、それからわずか3年で復活劇を遂げた。ところが、当時取引をしていたコメ生産者が仮に商品先物業者に口座を残していたとしても、当時の口座では今回の堂島コメ平均は取引できないという。新たに口座開設を行う必要がある。 
20日のセレモニーで挨拶した堂島取の有我渉社長は、「世界で最初に先物を始めた堂島米会所の流れをくむ取引所として、往時の革新的な知恵を現代にふさわしい形で継承、発展させていく」と決意を述べた。 
大阪府の吉村洋文知事も「大阪の金融面を強くしたいという思いがある。そのためエッジのきいた国際金融都市を目指していきたいが、そうした中で堂島コメ平均が上場されたことは、大阪の国際金融都市を進める上で、非常に大きな一歩だ」と期待を寄せた。

【SBI北尾社長の式典挨拶「堂島を総合取引所に」】

 この度は堂島コメ平均の上場、心よりお祝い申し上げます。コメ先物本上場はSBIグループとして2021年、堂島取引所に出資してきた我々にとっても悲願でした。今回の堂島コメ平均は、以下の3つの大義があると考えています。 
1つ目は、大阪を国際金融都市にすることです。SBIグループは国際金融都市大阪として、金融をてこに発展するグローバル都市、金融のフロントランナー都市という2つの柱の実現に尽力します。我々SBIグループがその中核として位置付けたのが2つの取引所で、国内初セキュリティートークンの取引所「START」を運営する「大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)」と「堂島取引所」であります。 
この度堂島コメ平均をスタートさせた堂島取引所が、今後さらに先進的なアセットの先物商品を世に出すこと、アジアのデリバティブ市場を牽引するくらいに成長することを期待しております。 
次にSBIグループが総力を挙げて取り組むのは、フィンテックセンターを大阪に設立することです。そのための色々な取り組みをすでに準備しております。このフィンテックセンターを作ることによって、2つの市場がうまく嚙み合って国際的な市場に持っていくことができるのではないかと考えております。 
2つ目は堂島コメ平均が日本のコメ生産者、卸売業者、商社の課題解決につながることです。日本のコメ価格は戦後長らく、国が決めていました。現在は自由化されておりますが、主に集荷業者と卸売業者が相対で決めております。この相対による値決めというのは、極めて透明性が保たれにくく、少なくとも値決めをする際にベンチマークが必要だという課題があります。堂島コメ平均は市場参加者によるコメの将来価格の見立てですので、関係者がベンチマークとして参照する。結果としてコメの価格決定の透明性向上に資するものだと確信しております。コメの生産者から卸売業者まで、堂島コメ平均の価格の上昇または下降のフィックス手段として波及することで、関係者の問題解決につながることを期待しております。 
3つ目は市場メイカーとしての堂島取引所の復活であります。先程来出ておりますが、堂島取引所の起源は今から約300年前、8代将軍徳川吉宗の時、享保15年に幕府によって公認された堂島米会所にあります。当時の堂島ではコメの代表的銘柄を帳面上で取引する「帳合米取引」と呼ばれる先物市場が運営されておりました。取引所として先物取引を行ったのは世界初といわれており、当時の堂島取引所はまさにイノベーターだったわけです。 
その後コメ先物は栄枯盛衰が続き、直近では2011年、試験上場での取引を開始したものの本上場に至らず、2022年にコメ先物の各銘柄商品が廃止となりました。しかし堂島取引所は不撓不屈の精神でコメ先物の復活に取り組み、日本全国の主要米の平均価格を指数化して先物取引にするというイノベーションによって本上場を実現いたしました。 
そして今日、SBI証券が堂島コメ平均の取り扱いを開始いたしました。現時点では47枚の買いが入りましたが売りはなく、ほとんど値段がつかないという中でストップ高の状況らしいです。あまり価格が激しく動いたり一方的な動きになるのも考え物ですが、まあ当初はご祝儀相場ということもあって、これでいいんじゃないかと思っています。 
享保のイノベーターから令和のイノベーターとして復活した堂島取引所ですが、いよいよ総合取引所化を目指すことになり、今後はSBIグループのカーボンクレジット、排出権取引である「Carbon EX」との連携が見込める排出権関連取引、またSBIグループの暗号資産事業との連携が見込める暗号資産関連についての先物の取り扱い等を検討していくことになると考えております。 
最後に堂島コメ平均の活性化、堂島取引所のさらなる発展を祈念し、私の挨拶とさせていただきます。

(Futures Tribune 2024年8月20日発行・第3306号掲載)
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