堂島取新社長に有我渉執行役員、農林中金出身62歳

2024-06-14

 堂島取引所は11日、有我渉執行役員が村田雅志社長に代わり次期社長に就任する人事を発表した。有我氏は農林中金出身で、同社常務執行役員などを経て今年2月、堂島取へ執行役員として入社していた。現在62歳。取引所の将来像を盛り込んだ経営改革協議会の提言に沿って2021年4月に株式会社化した堂島取は、初代社長に元金融担当大臣の中塚一宏氏を据え同年7月にコメ先物の本上場を申請したが、認可直前に政治情勢が変わり不認可とされた。22年6月、社長を引き継いだSBI出身の村田雅志氏は23年3月に貴金属市場の上場を実現し、三代目の有我氏にバトンタッチする。


堂島取将来構想、2025年には総合取引所の土台形成を

 「大阪万博の2025年までには堂島を総合取引所にする」、初代社長の中塚氏は株式会社への組織変更を控えた2021年1月18日、大阪の松井一郎市長、吉村洋文知事と面会しこう述べた。これは即興で大風呂敷を広げたものではなく、2020年10月に公表された経営改革協議会の提言に記載されていた内容である。
 もともと現会長の重光達雄氏が堂島取の取締役に就く前に各方面の有識者に呼びかけて設置した協議会は、同年1月から月1回ほどのペースで会合を開き、10月に提言を取りまとめた。
 コメ先物については認可を前提としていたが、不認可の際も「再度本上場を検討すべきだ」としており、今回の本上場申請もこの提言が土台となっている。現在主務省が認否を審査中だが、来週には結果が出る模様だ。
 提言のポイントをまとめると、農産物に関してはコメの他にも大豆、コーンといった現在取引がなく休眠状態となっている市場のテコ入れや、コーヒー、カカオといったアジアの経済圏に属する商品をデリバティブ化しアジアの投資家層取り込みを目指すべきだと指摘している。
 経産省の管轄商品については、貴金属や原油などは日本取引所グループ(JPX)の大阪取引所ですでに取引されているが、「多様な商品の上場によって、東京商品取引所(TOCOM)からJPXに移管された商品とのアービトラージ等も可能とし、商品市場全体の活性化につなげる」ため、23年3月に貴金属市場を開設した。
 2023年度以降は金融先物の取り扱いを開始し、総合取引所として動き出すとしており、「米株500」、「米株30」、「独株指数」などの株価指数先物や、暗号資産先物、オプション取引の実現を目標にしている。
 こうした将来構想を土台に、新体制では総合取引所に向けた検討チームを設けるなど、動きを具体化させていく方針とみられる。
 なお、有我新社長の略歴は以下のとおり。

有我渉(ありが・わたる)氏略歴
  • 1961年7月3日生まれ、62歳
  • 1984年4月 農林中央金庫入社
  • 2011年7月 同金庫営業第二部長
  • 2013年7月 同金庫投融資企画部長
  • 2014年7月 JA三井リース入社
  • 2014年7月 同社常務執行役員
  • 2015年6月 同社取締役専務執行役員
  • 2017年7月 農林中金総合研究所入社 顧問
  • 2018年4月 農中信託銀行入社
  • 2018年4月 同社常務取締役
  • 2021年4月 同社常務執行役員 を経て
  • 2024年2月 堂島取引所入社 執行役員(現任)
(Futures Tribune 2024年6月11日発行・第3292号掲載)
先物業界関連ニュースに戻る