グループ証券口座数1,200万突破、SBI収益初の1兆2,100億円超え

2024-05-16
SBIホールディングス北尾吉孝社長

SBIホールディングス 北尾吉孝会長兼社長兼CEO

 SBIホールディングスが10日発表した2024年3月期(2023年4月~24年3月)の連結決算(国際会計基準)は、営業収益が過去最高の1兆2,105億円(前期比26.5%)、最終損益(親会社所有者への帰属分)は872億円(同146.1%)と増収増益を記録した。主力の証券事業において中核のSBI証券が23年9月末に導入したオンライン手数料を無料にする「ゼロ革命」で顧客数が急増し、2月にグループの証券口座数が1,200万口座に達しグループ間企業のシナジー効果が強化され、推計158億円とされる手数料の逸失収益をカバーし、革命導入前を上回る188億円(第4四半期)の金融収益をあげた。


「ゼロ革命」でグループ間にシナジー効果、顧客基盤拡充

 「証券はもう大丈夫。これからの関心は半導体と銀行だ」、北尾社長は会見でこう述べた。SBI証券の24年3月期連結業績(日本会計基準)は、営業収益2,033億円(前期比16.2%増)、営業利益686億円(同10.6%増)、最終利益473億円(同14.3%増)でいずれも過去最高となった。
 「SBIグループの飛躍的な成長は企業生態系の組織優位性を最大限に発揮したこと」(北尾氏)で、土台を形成した主因は同社による「ゼロ革命」の効果とされる。
 新サービスのゼロ革命は2023年9月末に導入した、オンラインでの取引手数料を無料とするもので、これにより下半期158億円の逸失収益が生じたと推計されるが、その分顧客数増加によりSBI証券のみならずグループ全体の売上げ増に大きく寄与した。
 サービス導入前後の金融収益を比較すると、導入前の第1Qは157億円、第2Qが164億円であるのに対し、導入後の第3Qは151億円と減少したが、第4Qは188億円で導入前を上回り早くもシナジー効果が表れた形だ。
 サービス導入効果で最も重視していた顧客基盤の増加は順調に推移しており、2月に1,200万口座を突破した。また節目となる100万口座単位の増加期間を比較すると、2021年12月に800万に達した口座数が、900万突破は22年8月(約8カ月)、1,000万突破は23年3月(約7カ月)、1,100万突破は同年9月(約6カ月)、1,200万突破は24年2月(約4カ月)と期間上昇率も高まっている。今後、2,000万口座も視野に入れ第2弾、3弾のゼロ革命を実施する方針。
 直近の業務目標はNISA口座数での首位を掲げており、SBIのNISA口座数(476万口座)は、現在楽天証券(520万口座)次ぐ2位となっている。このため「ゼロ革命第2弾で楽天を追い抜き首位になる」(北尾氏)と目標を述べた。
 海外事業においても北尾氏は今後、海外金融サービスを強化する方針を示したものの「自分の経営者人生で一番難しい局面に入っていく可能性がある」と危機感を滲ませている。過去インド企業とのビジネス経験を踏まえ「中国以上に難しい。うまくいかなかった原因は情報が入ってこないからだ」と語る。
 それでも「金融の普遍はアービトラージで、安いところから高いところにカネが流れる。もう一度本質に戻り、東南アジアまたはカネが集まってあふれている中東、カネが必要なアフリカ、これらに経営資源を投入していく」と決意を表明した。
 なお、11月の米大統領選について北尾氏は、トランプ氏の再選を予想している。

(Futures Tribune 2024年5月14日発行・第3287号掲載)
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