コメ先物、事実上のGOサイン
農水省実務者勉強会、コメ先物想定骨子案

2023-12-20
農林水産省

 農林水産省は13日、米の将来価格に関する実務者勉強会の第3回会合を開催した。議題は①米の将来価格を決定することのできる取引の活用について、②米の将来価格に関する実務者勉強会とりまとめ骨子案について―の2点で、現物・先渡し・先物の3市場を組み合わせることで将来の価格変動に対するリスク可能性の抑制が広がると指摘した。骨子案(裏面に掲載)の中にも、想定される取引形態として『現時点で行われている「現物先渡相対取引」と現時点では行われていない「現物市場先渡取引」及び「先物市場取引」』と明記したことで、コメ先物に対する事実上の容認といえそうだ。


 勉強会では、農水省がコメ生産者および卸業者について、それぞれ先物市場と組み合わせた活用例を紹介した。具体的には、生産者サイドから「現物取引を行っている生産者が出来秋に入庫するコメが保管能力を超えないようにするため先物市場を活用して販売先を確保」、卸業者では「販売予定量以上の仕入超過分の販売先として先物取引を活用」といったケースが例示された。
 さらに現物市場と先物市場を組み合わせた活用イメージとして、「新たな現物市場が開場したことによって、現物市場と先物市場のそれぞれの機能を補完して一体的に行う、新たな米の取引も考えられるのではないか」と提案している。この新たな現物市場が10月に開場した「みらい米市場」を指していることは明らかで、農水省内ではかなり現実的かつ具体的な構想に基づいて資料作成に及んだものとみられる。
 これらの説明を受けた後、委員(末尾に名簿)による意見交換が行われたが、コメ先物を推す声はあっても反対する意見は出なかった模様だ。
 勉強会は8月に初会合、11月に第2回会合を行ったが、今回は「将来価格=先物価格」の構図がより明確化した。骨子案ではまとめの項で、「生産者等が将来の価格変動に対するリスク抑制を行う場合の選択肢が広がることが期待される」と締め括っており、コメ先物の復活に追い風となりそうだ。
 なお、次回の第4回会合は1月下旬を予定している。

米の将来価格に関する実務者勉強会

[委員]
◇飯島悠希(飯島米穀常務取締役営業部長)
◇井上貴利(井上農場専務取締役)
◇北本健一郎(吉兆楽代表取締役)
◇佐藤拓郎(アグリーンハート代表取締役)
◇佐藤正志(新潟ゆうき代表取締役)
◇妹尾次郎(千田みずほ商品部長)
◇田口健一郎(たぐち農産代表取締役)
◇平沢愛一郎(全国主食集荷協同組合連合会常務理事)
◇藤井暁(全国農業協同組合連合会米穀部次長)
◇前田智行(日本ゼネラルフード名古屋本社営業本部食品流通事業部長兼食品流通センター長兼アロス事業部長)
◇吉田宏(わらべや日洋食品執行役員購買部長)

米の将来価格に関する実務者勉強会とりまとめ 骨子案
1. はじめに
  • 生産者、集荷業者、卸売業者、実需者といった米の生産や流通に関わる事業者は、収穫量の増加・減少リスクや価格変動リスクにさらされており、川上川下を問わず、安定した価格・数量での取引を求めている。
  • 安定した価格・数量での取引を拡大していくためには、予め価格・数量を定めた事前契約の拡大等が課題となるが、現状では、事前に定めた価格が受渡時点での現物価格と乖離することにより「勝ち」「負け」が生じることを憂慮し、価格を定めた事前契約が伸長していない。

2.将来価格が明らかになる意義
  • 一般的に言って、米の価格動向がどのようになるかについては、幅広い関係者の関心の高いところである。将来的に広く社会で共有できる指標としての将来価格が明らかになれば、生産者は、米の品種選択や麦、大豆等との作物選択の参考とすることができるほか、川上と川下との間でも将来価格の相場感が共有されることが期待される。
  • また、関係者の経営の視点に立っても、
    ◆生産者であれば、播種前に(場合によっては複数年間にわたって)売上げの予想が立つことで、設備投資に必要な資金計画を立案することができ、中長期的な見通しをもって経営を行うことが可能となり、
    ◆卸売業者や実需者であれば、原料価格の見込みが事前に得られることで、商品設計において費用と利益をより正確に見積もることが可能となる。
    さらに、将来的に産地品種銘柄ごとに需給状況や期待に基づく将来価格が形成されることとなれば、将来時点の価格交渉の拠りどころとなることで、価格も定めた事前契約が拡大することも期待される。

3.予め取引価格を定め得る取引形態
  • 米の取引は、現在、相対取引が主体であり、わずかながら市場取引が存在している。
  • こうした中で、予め取引価格を定め得る取引形態としては、現時点で行われている「現物先渡相対取引」と現時点では行われていない「現物市場先渡取引」及び「先物市場取引」の3つが想定される。

4.まとめ
  • 現物相対取引や現物市場取引に加え、予め取引価格を決めることのできる取引形態(現物先渡相対取引、現物市場先渡取引及び先物市場取引)を組み合わせて活用することにより、生産者等が将来の価格変動に対するリスク抑制を行う場合の選択肢が広がることが期待される。
(以上)
(Futures Tribune 2023年12月15日発行・第3258号掲載)
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