江戸時代のコメ先物にスポット
映画「近江商人、走る!」公開

池上彰氏が予告編ナレーションを担当

2023-01-12
近江商人、走る!

 江戸時代のコメ先物取引が物語の軸となる映画「近江商人、走る!」(三野龍一監督)が12月30日、全国で公開された。1月10日現在、全国95カ所(都内8カ所)の映画館で上映されている。
 公式ホームページでは60秒の予告編動画(https://oumishounin.com/)が公開されており、ナレーションをジャーナリストの池上彰氏が担当している。この中で堂島米会所を「世界初の先物取引市場」と紹介しており、同所の流れをくむ堂島取引所にとってはブランド力の向上に資するといえるだろう。
 だが、映画撮影において製作側が堂島に協力を要請した形跡はなく、堂島米会所に造詣の深い研究者や有識者数人に取材したが、いずれも時代考証で助言するなどした事実はなかった。堂島取のホームページでも本作について触れてはいない。江戸時代のコメ先物を通じた商品先物取引の知名度向上やイメージ改善の機会を目の前に、商品先物業界にとって非情にもったいない話であると言わざるを得ない。

 物語は主人公の銀次(上村侑)と近江商人との出会いから始まる。大津の米問屋大善屋で丁稚奉公を始め、5年後には商才を発揮し、店の仕事だけではなく、職人の互助組合作りや茶屋の看板娘のアイドル化計画などを手掛け、界隈を盛り上げていく。
 その後、悪辣な奉行の罠によって大善屋が千両もの借金を背負うことになり、先輩丁稚である蔵之介(森永悠希)の父も関わる悪企みから店を守るため、銀次は大津と15里(60キロメートル)離れた堂島の米の価格差を利用した裁定取引を思いつく。
 電話もネットもない時代に、飛脚でも半日掛かる距離を越え、情報を迅速に入手するための作戦遂行が物語の山場である。
 映画の最後に、原作について「享保アービトラージ」とクレジットされているが、配給元であるラビットハウス(東京都中央区)によると、「『近江商人、走る!』は新谷ゆっちー氏が2018年に書いた『享保アービトラージ』というタイトルの脚本を原作としているが、同作は上梓されておらず一般公開されていない」との回答であった。
 なお書籍化については、現在検討中とのことである。

参考:近江商人、走る(公式サイト)
(Futures Tribune 2023年1月10日発行・第3189号掲載)
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