幻の救世主・商品ファンド物語【7】
レオ・メラメドCME名誉会長から本紙への手紙

2023-08-23
当時のフューチャーズトリビューン記事

写真:当時の記事とレオ・メラメド会長

 「商品投資に関わる事業の規制等に関する法律(通称:商品ファンド法)」が施行されたのは1992年4月20日だが、その3カ月ほど前、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のレオ・メラメド会長から本紙に手紙が届いた。そこには日本の商品ファンド業に対する同氏の意見が記されていたが、これは本紙からの質問に対する回答でもあった。同氏は外国企業の参入が阻まれないような配慮を望んでいたが、これは日本の商品ファンド業に食指を伸ばそうとする外国企業が当時多かったことを示すものである。手紙は本紙第982号(92.1.28発行)で掲載したが、今回再掲する(以下、本文)。


 私は日本において商品ファンド法が開設されることを全面的に支持します。
 近年、商品ファンド業は巨大かつグローバルな成長過程にあり、日本がそれに参画することは当然の流れといえます。商品ファンドは、先物市場の複合的で高度に洗練された特性を有効に活かすことで、個人投資家や機関投資家の先物投資に、慎重かつ細心なアプローチを実現させるものです。それゆえにファンドは、絶大な人気と非情な成功を、市場で勝ち得ることになりました。

 しかしながらその一方で、先物投資にリスクはつきものです。私は、日本政府が投資家に対して一定の基本的な保護が必要であるとしていることには賛成です。しかしまた、その際のルールはフェアでロジカルなものでなくてはならないと考えます。個人的意見を言わせてもらえば、そのルールはまず柔軟性をもつ必要があると同時に、次のプリンシプルを満たすべきです。それは、ファンドビジネスの精通度が高く先物市場で専門的経験を有するものには、より緩和された条件が与えられるべきだ、というものです。そしてこのプリンシプルは、ファンドを設立運営する業者の必要資本金額を決定する場合においても貫かれねばなりません。
 現在これに関して、日本の通産省が導入しようと伝えられる条件は、不必要なまでに苛酷なものであると、私の目には映ります。これについていくらなら適切であるかを言及することは、私にはできませんが、伝えられているような資本金額では高額に過ぎるというのが印象です。

 加えて、実績を要求しすぎると、先物やファンドの経験に乏しい銀行や信託銀行など金融系企業の参入意思は、潜在的な能力な資格はあっても排除されることになるかもしれません。明らかに、リース会社やノンバンクなどが参入できるのなら、それと対等かつ平等な参入機会を与えられるべき企業は、銀行をはじめとしてたくさんある筈です。参入適格性は、その企業が銀行であるとかノンバンクであるとかいう単純な理由で決定されるべきではなく、その企業が業務遂行能力があるかどうか、また、先物市場での実効性のある経験をどれだけ積み重ねてきたか、ということで判断すべきだろうと思います。とはいっても、その先物の知識や経験は、その企業の内部や、日本の国内に限定して考える必要はなく、企業の外部や外国の業者に連結することで獲得することもできます。

 外国企業に対して、日本の商品ファンドのゼネラルパートナーになることを与えるかどうかについては、前述の原則に照らし合わせて考えられるべきです。(日本の商品ファンド業者に必要な)ファンドのマネージメントに関する専門的な知識や経験の集積は、外国企業の中に存在しています。それなのに、日本のファンド業から外国業者を完全に排除するとしたら、それはひどくイロジカル(非論理的)なことだといっておきます。想定される理想的な形態は、十分な販売力を持った日本の業者(銀行やノンバンクを含む)がゼネラルパートナーとなったうえで、その運営はしかるべき専門的知識と経験を有する外国業者と提携などを通じて行うというものではないでしょうか。

 現在作られているルールがどのようなものになろうと、外国市場の利用を排除することはよくありません。外国の先物と先物オプションの市場は高度に発達したものです。そして、日本の商品ファンドやその投資家たちが、これを利用することを、だれも止めることはできません。また、日本政府が、日本の商品ファンドビジネスへの参入から、外国業者や外国市場を完全に排除する目論見が伺われるようなルールを導入するなら、それはまずの異本国内の投資家に対してアンフェアであり、ひいては米国の金融界とのあいだに、不必要な摩擦を再度発生させることになるに違いありません。

レオ・メラメド

(以下、次号へ続く)

(Futures Tribune 2023年8月23日発行・第3231号掲載)

⇒【NEXT】幻の救世主・商品ファンド物語【8】
商品ファンドの終焉

⇐【BACK】幻の救世主・商品ファンド物語【6】
商品ファンドは商社主導、ファンド業協会の設立

FUTURES COLUMNへ戻る