農産物先物の重要性、改めて認識すべき時

2024-03-08

 「マルサスの罠」という言葉がある。これは人口の増加率に比べ食糧生産の増加率が低く、増えた労働力を食糧生産に投入しても1人当たりの食糧配分は減少するため、結果として貧困や戦争をもたらすという主張である。18世紀末、英国の経済学者トマス・ロバート・マルサスが著書「人口論」で提唱した。
 実際、世界の人口は1999年に60億人に達し、そこから干支が一周する12年の間に70億人に膨らんだ。2021年7月時点で世界の人口は79億930万人にのぼり、地域別ではアジアが59%を占める。
 2021年5月、国連などが協力し食料危機に取り組む連合体が世界の食料危機に関する報告書をまとめ発表した。2020年に深刻な食料不足に陥った人は1億5,500万人に及ぶとされ、前年比で2,000万人増えている。
 こうした中、経済発展が著しい中国の肉食化が加速しており、家畜飼料としての穀物需要が爆発的に高まっている。世界の穀物生産は2020年に29億9,614万tだったが、うちトウモロコシは11億6,235万tで、中国は米国の3億6,025万tに次ぐ2億6,067万tを生産している。だが輸入量も増加傾向にあり、穀物の主要産地で天候不順が起こると食糧危機が深刻化するのは間違いない。日本も農産物先物市場の重要性を、改めて認識すべき時だろう。

(Futures Tribune 2024年3月5日発行・第3273号掲載)
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