国内FX取引1,200万口座・証拠金2.4兆円、取引金額2年連続1京円超え

2024-05-24

 外国為替証拠金取引(FX)店頭業者大手の外為どっとコムの調査機関である外為どっとコム総合研究所は、FX業界における業者数・口座数・証拠金残高などの各種データの推移及び顧客に対して毎月実施したFX投資家アンケートを基にした取引実態調査の結果を公表した。これは同社が毎年発行している「外為白書」(定価2,200円税込)に掲載されているもので、「外国為替市場の包括的な分析書」(竹中平蔵特別研究主幹)という位置づけだ。このたび同白書の第14号(外為白書2023)が刊行されたが、これをもとに国内FX市場の現状を辿ってみたい。


店頭・取引所合計で1,238万口座、5年連続で最高数更新

 2023年12月末時点における店頭FXの設定口座(総口座)数は1,124万7,192口座(前年同期比6.7%増)と、依然右肩上がりの状態にある。一方で、このうち第3四半期(10―12月、以下第3Q)に取引があった実績口座(稼働口座)数は84万1,475口座(同4.3%減)と約3.5万口座減少した。総口座数に対する稼働口座数の割合は6.6%だった。
 一方、東京金融取引所が上場する取引所FX「くりっく365」の総口座数も114万711口座(同4.4%増)と店頭同様に増加したが、第3Qにおける稼働口座数は1万6,544口座(同10.6%減)で、くりっくの口座稼働率は1.5%だった。
 この結果、店頭FXと公的な取引所FXを合わせたFX業界規模は、12月末時点で総口座数が1,238万7,903口座(同6.5%増)と5年連続で過去最高を更新した一方で、稼働口座数は82万2,070口座(同4.4%減)となった。
 両市場合算の第3Qにおける口座稼働率は6.6%と前年同期の7.4%から0.8ポイント減少した。
 合計設定口座数は2020年12月に初めて1,000万件の大台を突破し、その後も増加傾向を維持し2022年12月末にも過去最高を記録した。なお、店頭FXと取引所FXの合計稼働数が過去最高となったのは、コロナ禍で円相場が乱高下した2020年1―3月期の89万7,813口座である。
 取引業者数の増減をみると、第3Qに出来高実績のあった店頭業者(報告ベース)は47社で前年同期比2社減、2015年以降は50社前後で推移しており新規参入も撤退もほぼないものの、2008年度の最多118社と比較すると半分以下にまで落ち込んでいる。
 取引所FXについては第3Qに出来高実績のあった取引業者が19社で、前年同期と変わらなかった。


FX証拠金残高2兆4,118億円、取引金額1京円の大台キープ

 2023年末時点での受入証拠金残高をみると、店頭FXが1兆9,288億円(前年同期比6.1%増)と金額ベースで1,114億円増加し、取引所FX「くりっく365」も4,830億円(同4.3%増)と198億円増加した。この結果合計で2兆4,118億円(同5.8%増)となった。FX証拠金額は年度末(3月末)ベースで2010年度以降7年連続で過去最高記録を更新した後、一旦減少に転じてから大幅に盛り返した。 2023年通年(2023年1月~12月)における店頭FXの総取引金額(円ベース)は1京2,044兆8,065億円(前年比1.1%減)と、金額ベースで倍増し初めて1京円を突破した2022年に引き続き大台をキープした。一方で取引所FXの総取引金額は34兆8,032億円(同17.7%減)と7兆4,682億円減少した。この結果、店頭FX・取引所FXの合計取引金額は1京2,079兆6,099億円(同1.1%減)となった。
 店頭FXにおける各通貨ペアごとの取引金額では、米ドル/円が1京152兆154億円と最大で、取引シェアでは全体の84.3%を占めた。なおドル/円におけるこれまでの取引最高額は2022年の9,160兆3,026億円だったが、今回それを991兆円上回ったことで初めて1京円台に乗せた。
 2番目は8年連続でポンド/円が入った。取引金額は531兆8,014億円だったが39.7%減少(金額ベースでは約350兆円)し、取引シェア4.4%と3.8ポイント低下した。
 以下、豪ドル/円390兆1,595億円(前年比39.1%減、取引シェア3.2%)、ユーロ/円378兆3,301億円(同32.1%減、同3.1%)、ユーロ/米ドル226兆1,890億円(同50.1%減、同1.9%)と続いている。
 米ドル/円に取引が集中したため、他通貨ペアは取引金額が大幅に増えたものの取引シェアは低下した。こうした背景について外為どっとコム総研では、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げと日銀のマイナス金利維持という比較的わかりやすい金融政策の対比でドル高円安が進行したことで、個人投資家がドル/円を手掛けやすかったと分析している。


メインプレーヤーは40代、新規口座は30代が最多に

 外為総研が外為どっとコムを通じ毎月FX投資家向けに実施しているアンケート調査(2023年1月~12月、調査対象57万口座、回答数未発表)によると、期間中にFX取引を行った年代は40代が32.0%と最多だった。次いで50代28.4%、30代15.5%、60代12.2%と続いた。全体的に40代がメインプレーヤーで、今後も40~50代を中心に据えた金融サービスが主力となりそうだ。
 新規口座開設者の年代別割合では、30代が最多で27.1%、次いで40代の25.2%、20代が19.6%、50代が17.2%、60代が6.6%と続いた。これは約20年前の「円キャリー取引」の隆盛時に取引した層が、今回の円安進行を予見し再度取引開始を決め口座開設に臨んだものとみられる。また若年層においては2022年、高校の教育課程において金融教育が必修化(ただし投資、株、資産運用は含まれず)され、成人年齢が18歳に引き下げられ親の同意なしでも口座開設が可能となったことなどが影響し、10代の口座開設者割合もわずかに増加した。
 なおアンケート集計結果によるFX個人投資家の平均的人物像について、①40代がメイン、②1回の取引数量は30~40Lot(1Lot=1,000通貨)、③レバレッジは4倍程度、④適宜損失を出すことに躊躇し最終的に大きく負け越す様子が窺える―とし、リスクとリターンの定量的な分析やそれらに基づく資金マネジメント、投資戦略に一考の余地があるなどと結論付けた。

(Futures Tribune 2024年5月21日発行・第3288号掲載)
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