「農産物市場研究会」、月2回開催で9月取りまとめ
沈みゆく農産物先物、取引はトウモロコシのみ

2023-05-25
木下信行社長

<米産業懇話会の様子>

 現在、国内農産物先物市場で出来高があるのは大阪取引所のとうもろこしのみで、2022年度(22年4月~23年3月)の合計出来高は4万5,000枚(9位)という低水準の状態にある。期間中1位の標準金(大阪取)は700万枚、2位の標準白金(大阪取)は247万枚、3位の原油(東商取)は209万枚と、国内商品先物の勢力図は金が上場されたこの40年間で農産物に代わり貴金属が主役に躍り出た。
 農産物先物は他にも一般大豆(大阪取)、小豆(大阪取、堂島取)、とうもろこし50(堂島取)、米国産大豆(堂島取)、新潟コシEXW(輸出用コシヒカリ)(堂島取)と2取引所で5商品あるが、いずれも年度間を通じ取引ゼロに終わっている。
 こうした状況を憂える声は商品先物業界の外からも聞かれる。特にコメ生産者からは、農政調査委員会が2022年度に実施した米産業懇話会(写真)で先行指標となる先物価格が提示されない弊害を訴える声が続いた。コメ先物は2021年8月、本上場申請が不認可とされ新潟コシヒカリやあきたこまちの先物市場が廃止されたが、新潟コシヒカリの輸出米市場は現存している。
 コメの輸出増を国策として掲げながら、その先物市場が全く取引がないという状態が放置されている現状が、そもそも異常事態といっていいだろう。
 だが農産物市場研究会ではコメだけにスポットを当てることはせず、むしろ様々な農産物の流通実態を取り上げ、市場の必要性を議論する。月2回の開催を経て9月に取りまとめを図る方針である。
 農政調査委は1961年(昭和36)、内閣総理大臣の諮問機関である農林漁業基本問題調査会の答申に基づき設立された。農業及び農村の基本問題に関する調査・研究事業を行い、調査研究の結果は冊子や書籍にまとめ、農業関係者に広く読まれている。

参照:農政調査委員会
(Futures Tribune 2023年5月23日発行・第3216号掲載)
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